サウナは必ず「ととのう」のだろうか?正しいサウナ体験のための書籍案内

読んでみた!

サウナがブームです。

僕自身は銭湯サウナ通いが趣味になったのが3年前。

勤務店舗の近くにたまたま銭湯があったからなのですが、最近明らかにお客様の層が変わってきています。

前までは、利用者の最高年齢が僕という状態だったのですが、20代かなと思われるような若い人が急増しています。

若者たちの目的はサウナ。順番待ちが発生しているぐらいです。

青山のサウナで熱心に「起業の天才」なんて読んでいる若者や

水風呂から出て、扇風機の前で何かひらめきを書きつけている学生を見て驚きました。

書店や書籍をみても、関連本が増え、雑誌でサウナが特集で組まれることが多くなりました。しかも、そこそこの売上を作っています。

ということで、今回のテーマはサウナについて。

サウナブーム。

筋肉体操を見た時に、流行の基調が体感・体験に置かれるようになったと感じました。サウナはそれに続く現象だと考えています。しかも、宗教性を持っているのです。

サウナについてはぶっちゃけこの2冊で十分です。

サウナ本色々出ていますが、ぶっちゃけこの2冊で十分です。

サ道 心と体が「ととのう」サウナの心得 (講談社+α文庫

医者が教えるサウナの教科書

というのは、他の本はだいたいこういうものです。

  • サウナ好きな著者による最近のブーム解説
  • サウナ歴史紹介
  • 「ととのう」とどんないいことがあるかの紹介
  • サウナ好きによるコメント、対談
  • 極端な例の紹介(サウナが好きすぎて自作するとか)
  • グッズの案内
  • 全国各地のオススメサウナの紹介
  • サウナ飯

若干の差があれほとんど同じです。

フィンランドのレポがあったり。

静岡の有名サウナ富士山の天然水が魅惑的な「しきじ」の紹介があったり。

名古屋栄の「ウェルビー栄」の氷が張った水風呂紹介であったり。

読む分には興味深いです。好きですよ、こういう雑記。ですが、今すぐ実践できる話は少ないです。

サウナのトリビアルな情報について楽しむもの一興ですが、このブーム推進力である、「ととのう」について迫る内容は少なく、周辺情報を集めた記事の寄せ集め本が多いのです。

サウナで一番知りたいのは、「ととのう」というあいまいなキーワードについてではないでしょうか。

サウナに行ってみたものの果たして本当に「ととのう」の境地にたどり着けましたか。

仲間と一緒にサウナに行き「ととのった?」なんて聞かれて、「ととのいません」なんて言うのが気まずいから「ととのった、良かったぁ」なんて言ってしまいませんか?

そのととのい「気持ちよかった」と十分な差異がありますか。

第三のビールとプレミアムビールを飲み比べて違いは分かっても

「気持ちよかった」と「ととのった」の境界線は、正直あいまいではないでしょうか。

サウナに行くたびに感じている気持ちの良さは、真の「ととのう」のか。書籍で紹介されたあの感覚とどうも違う、とかえって飢餓感が増しているのではないでしょうか。

体感としてはあいまいな「ととのう」なのですが、効果については結構明確に伝えられています。書籍で紹介される「ととのう」とは

  • 脳がすっきりする
  • 集中力が上がる
  • アイディアがひらめく
  • ボケないらしい
  • やせるらしい
  • できるビジネスマンはサウナに入るようだ
  • 有名人はみんなサウナ好きだ
  • 出世するにはサウナは必須だ

といったものです。それも結構誇張されています。

書籍を含め、みんなが「ととのう」と言っているのに、その境地にたどり着いたのか自信が持てない、しかもそれを公言するわけにはいかない。

サウナの中でなかなか「ととのう」ことができなく、やきもきしてしまう。おまけにタチの悪いことに、サウナの効果は毎日行った方が良いと紹介されています。

単に回数が足りないのか、と今日も「ととのう」の境地にたどり着けることを期待して、サウナに時間を費やしてしまうのです。

サウナブーム推進力は「ととのう」というレアを引き当てることができないので、ひたすらガチャに課金してしまうようなものではないでしょうか。

そこで、「ととのう」と口コミのあるサウナに行く。関連書を買ってしまう。サウナハットを買ってしまう。ということではないでしょうか。

少し前にタピオカブームがありました。

タピオカ自体の美味しさもありますが、タピオカという話題の情報を摂取している私、いつものスタバではなく、流行に乗っている私になりたいからタピオカを飲む、という人が大多数ではなかったでしょうか。そうでなければゴンチャの行列は説明できないでしょう。

たいていの流行がそういうものです。クリスピークリームドーナツにも並びましたね。

あいまいな「ととのう」について唯一科学的な説明をしている一冊

流行が発生すると、それをお金にしようと様々な情報が飛び交います。変な情報をつかまされる確率が高くなるのです。

多くの書籍がある中で、僕の一押しはこれです。

医者が教えるサウナの教科書

「ととのう」という個人の体感について科学的な説明をしている唯一の本です。

この本のキモは98頁です。

そもそも「ととのう」とは結局、何なのか?それを医学的に言うとこうなります。「ととのい」とは、血中には、興奮状態の時に出るアドレナリンが残っているのに、自律神経はリラックス状態の副交感神経優位になっている稀有な状態。

興奮状態であるがリラックスしている特殊な状態。

サウナ・水風呂・外気浴によって興奮と冷静が共立した状態をつくり出せる。これが一番すっきりした説明ではないでしょうか。

この本はさらに、正しいサウナの時間・体の形、水風呂の時間・温度、外気浴の時間等、書かれています。

「ととのう」ためにどういうサウナをすればいいのか、困っている人にとって一番の答えが載っている本です。

たしかに僕自身、この本を参考にし水風呂のあとの外気浴を積極的に取り入れたところ「ととのい」ました(以前に比べてという意味で)。

そうだな、

不意に灰色の猿に後頭部を舐め回され、持ち去られるような感覚がありました。

他のサウナ本で「ととのう」メカニズムの紹介はほとんど、この本の引用で構成されているほどです。

感覚的な事を医学の視点で説明するほど説得力のあるものはありません。

「ととのい」の境地に至れず迷う人にとってまさに福音となるでしょう。

ただ、この本で紹介されている。温度の低い水風呂に長く入りすぎると、ドーパミンが出てサウナ依存症になる、との一文。これは、個人的に抵抗がありました。

個人的に好きなのですよ。温度の低い水風呂。水風呂には法悦がありますサウナは10分が限界なのですが、水風呂は6分以上いけます。

水風呂が3分を超えたところで、段々耳が澄んでくるのです。水紋を見つめながら、どこまで行けるだろうか。ワクワクするのです。

その先の世界を見てみたい。何故かどんどん視力も良くなる。

肉体の秘密に触れたような感覚があるのです。

再現して試してみたいので、余裕がある時に水風呂10分以上にチャレンジしたいと考えています(マネはしないでくださいね)。

こちらの本ですが、

  • なぜサウナで仕事のパフォーマンスが上がるのか
  • 医学的に正しいサウナの入り方
  • ここまでわかったサウナの科学

特に最初の3章に有益な情報があります。

下手な流行を追った本よりも役に立つこと間違えなしです。

サウナブームのグランドゼロともいえる一冊

サ道 心と体が「ととのう」サウナの心得 (講談社+α文庫)

もう一つ欠かせないのが、この本です。

この文庫は2016年発刊、もとになった単行本は2011年発刊です。「ドラマ サ道」の放映が2019年と考えると古い本です。

しかも2011年出版はパルコ出版からです。

どちらかというと、とがった本出すパルコ出版。例えば、ソクラテスの弁明(関西弁訳)なんて出しています。岩波版で挫折した人は是非オススメの一冊です。

この出版の経緯。推測ですが、著者タナカカツキさんのアーティストとしての活動(コップのフチ子は彼の作品です)がパルコ出版との縁になったのではないでしょうか。

「サ道」は個人の体験だけで押し切った本なので、簡単には出版できないものです。

幸い、個人の体験がじわじわ共感を呼び、講談社で文庫化され、今のブームに至るのですが、出版時は扱いに困ったでしょう。

今でこそサウナ本は、サウナ→ととのう→ビジネスがはかどる! なんて論理を振りかざすビジネス書担当が喜んで自分の陣地に持ってゆきます。

しかし、2011年の時点では、サウナ本を置こうとした場合どのジャンルが引き取ったでしょうか。宙ぶらりんになったものです。

旅行書としてのスーパー銭湯案内ムックの類似のようでそうでない。

エッセイなので入浴・温泉健康法の本とも少し違う。

女性実用ではなく、男性実用な雰囲気だが、サウナはマッサージの隣か?いやあくまでエッセイだ。

タナカカツキさんのイラストエッセイという捉え方でいくならばマンガか文芸書の隣だが、読者がついているわけでもなく、売上は期待できないだろう。

ひょっとしたら、パルコ出版だからという理由で芸術書担当が引き取るという事もあり得たのではないでしょうか。

(芸術書・アート書は最終的な引き受け役になることが多いのです。僕は芸術書担当やっていた時はなんでも引き受けて売りましたね。なんでも芸術にこじつけることができますので。)

おそらくジャンル未確定のまま返品されることが多かったのではないでしょうか。それでも腐ることなく、共感する人が現れここまで広がったのには感心します。

さて、この本ですが著者の体感ベースで書かれています。

運動不足が気になり、スポーツジムに入会した、通ううちに館内のサウナに気付く。サウナかぁおっさんの集まるところだよな、大人の我慢大会だよな。けど、高い会費払っているし、元取るつもりで入ってみるか。おっ、意外といい、罰ゲームだと思っていた水風呂もいい。サウナにはまる。

という内容です。

そして、驚くべきはこの本「ととのう」という表現が出てきません。

「スーパー穏やか」「ニルヴァーナな状態」に「水風呂」に入っている時になるのです。

外気浴についてはほとんど触れられません。

むしろ、力点は水風呂にあります。

サウナの主役は水風呂。と言い切ります。

サウナ室で熱せられたからだを水風呂でクールダウンするわけですから、水風呂の衝撃力って半端ないですよね。それだけ、水風呂の効用って分かりやすいのです。

僕自身も、水風呂が好きだからサウナに入っているようなものです。

思うに若い時にサウナにはまらないのは、若さゆえの皮下脂肪無さから水風呂の衝撃がダイレクトに伝わるからではないでしょうか。水風呂の心地良さより衝撃が勝りサウナ自体を避けてしまうのです。

ある程度おっさんになって皮下脂肪に体が守られているから、水風呂が心地よいのです。

となりの若者が水風呂にさっと浸かって飛び出す姿を見て「最近の若者はこらえ性が無い」なんて感想を持ったとしたら、それはざんねんなおっさんならではの勘違いなのです。

さて、サ道ですが、進むにつれ水風呂どころか

たどりつくところ究極は、サウナに行かなくてもよい、というところかもしれない。

中島敦の名人伝みたいな話になってゆきます。

サウナと水風呂の感覚についてタナカカツキさんは書きます。

自分が羽虫となって花畑で蜜を吸い、生のまま舞い、やがて死を迎え朽ちてゆき、養分となって花となる。

この一連の描写はこの本の骨頂と言っていいでしょう。

この妄想ともいえる描写が、言語化されていなかったサウナ感覚を言葉として初めて立ち上がり共感を生んだのではないでしょうか。

この本が実用的かどうかは別として、ムーブメントのグランドゼロが明確に分かる稀有な例として、この本を読む意義は高いです。

「ととのう」や外気浴、サウナハットといったものが後から加えられた教理であることに気付くだけでも有益なのです。

幸いkindle unlimitedにも入っていますので、入手しやすいです。

さいごに 僕のサウナへの妄想

僕はサウナに入るたび、自分に起きる身体の変化は、歴史上の何に比定できるか、妄想します。

温度計が示す温度は95度

ヒーターの熱波を受けながら瞑想すれば

目の前に、護摩行の焔火があり、不動明王が浮かび上がります。

昔インドの修行僧は40度を超える太陽の下で座禅してだろう。

熱に身を焦がし、何をつかもうとしただろうか。

老い、悩み、病を得る、叶わぬ希望、それであっても、どうにか切り抜ける術はないものかしかし、そんな懊悩を考える余裕は失せてゆく、

ただただ、生命を脅かす熱から身を守るように汗が噴出し思考は止まる。

座禅の後は、清らかな流れに身を任せ沐浴する

はるか遠くの山より流れ着く清流を一身に受けて息を吐く

太陽と川の流れ、かくも自然は厳しく慈愛に満ちたものか

からだを風任せに投げ出した時に、それまで自分を捉えていた懊悩の小ささに気付く

節理に包まれながらも生きている事

それ自体の大切さに気付かされるからだ。

ある種の宗教的な修行の追体験がサウナには含まれている。そんな、妄想を僕は抱くのです。


筋肉は裏切らないという言葉が流行りました。

流行が体感に近いものになっている傾向があります。

サウナもまた体感をベースとした流行です。

「ととのう」の境地にまだ至れていないので、もう少し流行に乗りつつ精進してゆこうと考えています。

きっといつか、垂直にこれが「ととのう」だチャクラが開くような体験が待っているのでしょう。

まぁ、銭湯自体、サウナのほかに、炭酸泉や電気風呂、銭湯温泉という魅惑が控えています。

特に、電気風呂が深いのですが、それはまたいつか。

サウナの次はなにか。

次なる数寄はもうすでにでているのでしょう。

サウナのブームの走りとなる本が出たのは2011年。それを考えれば、未来の流行はすでに書店のどこかの棚に、ひそかに、こっそりと挿さっているのです。

もうすでに、誰かが導師となって活動をはじめているのかもしれません。

今日はここまで

お読みいただきありがとうございました。

タイトルとURLをコピーしました