新聞広告。
特にサンヤツ広告(新聞の一面 一番下の欄にある広告欄)に不思議な本が紛れ込んでいることが多いです。ちなみに、3段分の高さで、8等分されているのでサンヤツと呼ばれています。
新聞。発行部数の凋落が伝えられていますが、それでもなお、定期購読世帯の割合は、まだ6割存在しています。
新聞が6割の世帯届くとは、視聴率で言えば、60%のTV番組があるようなものです。
新聞も種類がありますが、ざっくり大手紙1つに広告を載せれば、10~20%の世帯の目に触れるということです。
このように新聞広告にはまだまだ侮れないリーチ力があるのですが、新聞の一等地と言える1面の広告欄ちょっと首をかしげる広告があります。
はい、今回のテーマは新聞広告です。
大手出版社だけではなく、マイナーな出版社も利用している不思議な場所です。
今日のマイナー出版社
試みに、今日(2021年5月5日)の日本経済新聞13版(東京)のサンヤツを見てみましょう。
左から
- 偕成社(絵本・児童書の出版社)
- 自由国民社(現代用語の基礎知識で有名)
- 双葉社(クレヨンしんちゃんで有名)
- 柴田書店(二大専門料理書出版社の1角)
- 日経BP(半ば自社広告)
- とりい書房(?)
- アグネ技術センター(?)
- 秀和システム(IT系出版社と思いきやエッセイにも手を出してる)
書店員を2,3年もやれば、出版社のおおよその知名度・規模が分かるのですが、今回の場合
失礼ながら、とりい書房・アグネ技術センターはあまり聞かない出版社です。
どのくらいマイナーなのか、書店アプリHONTOで在庫検索しました。このアプリ、丸善・ジュンク堂・文教堂ほかの在庫状況横断で調べることができるのです。
結構便利ですねHONTO
とりい書房 2020年に出版されたタイトルが9点 HONTOアプリ在庫しているタイトルは6点。在庫店舗はおおむね20店舗。とりい書房は、資格書、不動産、税理士読み物を得意としているようです。
アグネ技術センター 2020年に出版されたタイトルが4点 HONTOアプリ在庫しているタイトルは4点。在庫店舗数は多いので20店舗、少ないのは一桁店舗。出版物がすべて、どこかの店舗には在庫している。書籍の他に月刊で雑誌 『金属』『個体物理』をそれぞれ発刊(しかし、在庫しているのは4店舗のみ)。金属業界では知られている出版社なのでしょう。
1年間出版したものが、とりい書房で6点アグネ技術センターで4点。これは零細出版社といっていいでしょう。
ちなみにHONTOでの検索は丸善・ジュンク堂だけでも94店舗(文教堂を含めると計192店舗)を対象としています。
一般的な本がどのくらいの店舗に在庫しているか見ると、夏目漱石のこころ(新潮社版)が171店舗 渋沢栄一 論語と算盤(ちくま新書)が175店舗 です。そこゆくと在庫店舗が20とか一桁というのはどのくらい少ないことなのかご理解いただけると思います。
さて、どんな本が広告されているか。
とりい書房

ちなみにこちらは5月13日発刊なので、予告広告です
アグネ技術センター

・・・
考えてみてください。
大型連休の最終日5月5日。日本の経済・経営への意識の高い人は必ず購読しているという日本経済新聞の1面。この場所にある広告が、まだ発刊されていない本とたたら製鉄の技術論。
・・・なにか、おかしさを感じるのは僕だけでしょうか
一番目立つところの割には、だれに向けられているのか意図が読めない広告ではありませんか。
ゴルゴ13への連絡方法なのでしょうか?
しかも、この現象今日がたまたまではありません。よくあるのです。
新聞広告から上がる客注を前提とした出版社
また書店ではこんなこともあります。あまり聞かない出版社が新聞に広告を載せます。
お客様がこれは欲しいのだけど、と切り抜きを持ってくるのですが、全店舗何故か在庫がない。旗艦店でも在庫していない。
それでも、お客様は欲しいとおっしゃるので、取り寄せとなり客注受付をする。
そこで出版社に電話をすると、何故か直送のみで送料が生じるというのです。
特徴としては健康系が多く、広告にはお近くの書店にお問い合わせいただいて無い場合はこの電話番号まで、とご丁寧に誘導がある。
お客様にしてみれば、直接取り寄せは代引き手数料や送料がかかるから、なるべく書店で取り寄せたい。
ところが、書店も送料がかかってくるのです。送料は基本書店持ちなので、あまりおいしくない商品です。
書店にほとんど配本が無いものが新聞広告に出ているのか不思議に感じています。
思うに、書店にはほとんど配本していなくても、新聞広告でお客様の関心を引き出し、問い合わせが来たらその都度発送する商売しているのではないでしょうか。これならば、返品も生じないので生産調整がしやすい。こんな通販のような商売をしているのです。
とはいえ、これが新聞の広告スペースを借りて行うほど規模の大きな商売には見えません。
新聞広告、今のところサンヤツをはじめ出版社の広告枠として一等地が割かれています。
広告の出稿ルールで書籍しか出せないのですね。この先、一面の可視性バツグンな場所を新聞はいつまで、広告欄を書籍・雑誌優先という姿勢をつづけるでしょうか。お金で決まっていないような予感すらします。
どこかで堰を切ったように書籍・雑誌広告から別の広告に変えてゆく、そんな日が近いように思います。
いずれにせよ、お金のやり取りも含めて、新聞広告の縄張りは不思議なものを感じます。
今日はここまで。
お読みいただきありがとうございました。