ふるさと納税と言えば
蟹!蟹!雲丹!雲丹! 桃!桃!メロン!メロン! 肉!肉!酒!酒!
返礼品選びが楽しみな恒例行事になりましたね。
ふるさと納税は、海産物やくだもの、食べて終わるものが多いです。現にふるさと納税の人気商品と言えば海産物・くだもの勢です。しかもこの手の広告が目立つから、ついつい選んでしまいがちです。
蟹!蟹!雲丹!雲丹! 桃!桃!メロン!メロン! 肉!肉!酒!酒!
しかし!今回はちょっと待った。毎年それではつまらなくないですか!
どうせなら残るものを。読書家にとってためになるものをと考え、書店員目線で調べてみました。ふるさと納税で書籍。
どうせ○○市史といった鈍器本のオンパレードかと思ったのですが、発見の連続でした。
驚いたことに、ふるさと納税ならではのレア本が出てきたのです。
ということで、今回は書店員がおすすめする 読書家のための返礼品6選 <書籍編>
恒例のふるさと納税選びにお役立てください。
なお、今回の調査は
ふるさとチョイスで調べました。
ほかのふるさと納税サイトも見たのですが、ふるさとチョイスが一番充実しているのです。
今回の掲載返礼品ですが自治体の都合で変わることがあります。
「メカさんが紹介してるのに無いとはどういうことだ!ポンコツ!」
こういったこともありえますので、ご了承のほどお願いいたします。
本が出合った時が買い時であるようにふるさと納税も気になった時が申請どきなのです。
自己紹介
メカ書店員と申します。10年以上書店員をしています。
前回<絵本編>では、絵本の良さを伝える試みが様々な自治体で行われている事に感動しました。
書店は書籍をフローとして扱う側面がありますが、良さを伝えるという立場に立つとストックとして扱います。それの考えがしっかり出ているところに感激したのです。
さて、今回はどんな発見があるでしょうか。
ユネスコ記憶遺産 山本作兵衛コレクション 福岡県 田川市

山本作兵衛ユネスコ記憶遺産 田川市が所有する炭坑記録画584点
世界遺産。増えすぎてユネスコの利権ではないのか、少し僕は疑っています。指定に向けた活動が一種の町おこしで、箔を付けたい、観光客はやってくる。そんな打算に不純さを感じるのです。
ですが、ユネスコ記憶遺産 山本作兵衛コレクションについては、別です。指定された経緯が意図したものでは無かったところに興味ひかれるのです。
元々三井炭鉱田川鉱業所伊田竪坑櫓など炭鉱遺産を「九州・山口の近代化産業遺産群」の一環として世界遺産に登録しよう、と関係各所が動いていました。関連資料として紹介した作兵衛作品の記録画が、海外の専門家らから高く評価されたのです。
思いがけないものが評価され、あれよあれよでユネスコ記憶遺産になったのです。この一件で記憶遺産自体が注目されるようになりました。
山本作兵衛自身は美術教育を受けた経験は無く、水彩やデッサンの技術も稚拙なのですが、そこいい。記録画が炭鉱産業に支えられた日本の近代文化への記憶としてレガシーとなったのですね。
関連書籍も何点かでています。
https://amzn.to/3nWtYWl 山本作兵衛と炭鉱の記録 (コロナ・ブック)
https://amzn.to/3xSbGtQ 炭坑の絵師 山本作兵衛
返礼品には寄付金10,000円の3点セットのほか
35,000円の10点セットもあります。
写真の鬼 土門拳の作品に迫る 山形県 酒田市
「鬼の眼 土門拳の仕事」セット 山形県 酒田市

寄付金20,000円
酒田市には1983年にできた日本初の写真を主体とした美術館があります。

土門拳は酒田市の出身の写真家。
有名な写真がたくさんありますが、読書家絡みですと川端康成のポートレートが有名です。
今の時代、写真なんてスマホで誰でも取れるもので、さて写真家というものは素人とどう違うのだろうか。美術の一ジャンルに写真があるのはなぜだろう。そう考える人がけっこういると思います。
ところが、違うのです。写真とは、被写体と撮影者の関係性が赤裸々に出るものなのです。
出来上がった写真の表情は、被写体と撮影者の共同作業だったりするのです。
ほら、お手持ちのスマホに入っている写真。何が多いですか?人物ですか?食べ物ですか?風景ですか?それ一つ取っただけでも人がにじみ出るのです。
ましてやできた写真。そこに写っている物はあなたとの関係性ではないでしょうか。
さて、返礼品は2017年に発刊した「鬼の眼 土門拳の仕事」(光村推古書院)。「古寺巡礼」「筑豊のこどもたち」など、生涯を通じて土門が撮った仕事をまとめた写真集です。
光村推古書院であれば、鑑賞入門書として問題ないです。
ほかに、絵葉書 「古寺巡礼」×1(8枚組)、飛鳥寺 一筆箋×1、永保寺花狭間 チケットホルダー×1がついてきます。
これとは別に、土門拳「昭和の子ども」写真集オリジナルグッズセット

寄付金20,000円
も用意されています。
書籍もいいですが、酒田市に赴き美術館で大きく引き伸ばされた写真に向かうのもいいですね。
民俗学者 宮本常一の出身地にちなんで 山口県 周防大島町
周防大島町は山口県でも岩国の南に位置する瀬戸内海の島です。
ここが民俗学者、宮本常一の出身地なのです。
宮本常一離島論集全巻セット 山口県 周防大島町

寄付金95,000円
宮本常一は生活が変わってゆく中で、捨てられてゆく生活道具に「先人たちの知恵や努力、先人たちが歩いてきた足跡を見つけることができる」という考えを持ち、民具学という領域を作り出した人です。
本としては いえば忘れられた日本人 https://amzn.to/33pNqBl
が有名です。
自身が島の出身ということもあって島の研究を精力的に行っていました。
その集大成。離島論集全巻セットがへんれです。
版元はみずのわ出版、周防大島町にある出版社です。
うーん。地方の島に、このような出版社があるとは世界が広がる思いです。
そう、出版社は東京に偏在しているので、見方にバイアスがあるのです。
TVも東京制作と大阪制作ですこし違いありますよね。あれと同じです。
ましてや、島の出版社、他の出版物にも期待が高まります。
離島論集は
離島振興運動のオルガナイザーとして知られる周防大島出身の民俗学者宮本常一(1907-1981)が、季刊『しま』(1953年12月、全国離島振興協議会の機関誌として創刊。73年以降、財団法人日本離島センターの広報誌として継続発行)創刊号以降、最晩年まで執筆した論考の集成。日本の「島」と「島人」に向けられた、宮本常一のまなざしを読み解く。第1巻 「怒りの孤島」に生きる人々/農業のいろは(解説…稲垣尚友・大矢内生気)第2巻 中種子方式の提唱/離島農業の根本問題(解説…斎藤潤・大矢内生気)第3巻 利尻島見聞/離島振興の諸問題(解説…平野秀樹・大矢内生気)第4巻 馬毛島・青ガ島のその後/離島と観光の問題(解説…管田正昭・大矢内生気)第5巻 ふるさとの島にありて思う/島と文化伝承(解説…管田正昭・大矢内生気)別巻 離島振興は進んでいるか/離島青年会議に寄せて(解説…高木泰伸・大矢内生気)別巻付録CD(2枚組)宮本常一講演「大島をどう守るか」(1972年8月4日、於山口県・大島町公民館、宮本常一記念館所蔵、48分27秒+43分20秒)
というもの。寄付金額は高くとも一度読んでみたい本ではありませんか。
ほかに寄付金10,000円で写真集+ポストカードも用意されています。
ふるさと納税もサイン本商法が 千葉県 八街市 静岡県 三島市
絵本作家なかざわくみこ 直筆サイン入り絵本 千葉県 八街市

八街市在住の絵本作家なかざわくみこさんが描いた絵本とポストカードのセットです。
なかざわくみこさんは5冊絵本を出版されています。
- なぞなぞのみせ 偕成社
- さがしえ12つき 白泉社
- かあさんのまほうのかばん 童心社
- おばあちゃんとおんなじ 偕成社
- まんぷくよこちょう 文溪社
すみません。初めて知りました。
これと似たような絵本、サイン入りというふるさと納税が
静岡県三島市にもあります。

こちらには、絵本作家が3名
- 宮西達也
- えがしらみちこ
- 竹山美奈子
この中では、おまえうまそうだなの宮西達也は有名ですね。
サイン本をふるさと納税の返礼品にする。
もし、村上春樹や鳥山明のサイン本が返礼品なったら、面白いではないか。
ふるさと納税。返礼品をAmazon券にするなど、コスパ重視の競争が各自治体で繰り広げられました。過剰な返礼品が目立ち、寄付金の30%程度の返礼品にしなきゃダメと規制が強くなったことは記憶に新しいです。
30%では今までのようなお得感を出せない。そこでサイン本は原価が低くて、独自性、プレミア感がある、格好の返礼品と言えるのではないでしょうか。
婚活事業とふるさと納税を兼ねた施策 北海道 清水町
清水男子図鑑『働く男子編』&『旅する清水編』セット 北海道 清水町

少し前、『佐川男子』なんて写真集がありました。働く男性が写真集になることは業界のイメージアップにつながりますし、嬉しいことです。『書店男子』なんてのもありましたね。
ブームは去りましたが、おっと、ふるさと納税にこの手の本があるとは。
書籍にQRコードが付いていて、動画でも清水男子が確認できます。
おかげさまで、第一弾男子図鑑がきっかけとなり、結婚された方がなんと1名!カップリングも3名成立しているとのことです。
婚活と兼ねてしまうとは、企画の力のある自治体ですね。
さて清水男子図鑑ですが、確認したところAmazonにも大手書店にもない1冊です。
メルカリにもない(2021年5月調べ)
なんとプレミアな本。きっとプレミアな男子が載っていることでしょう。
風景の写真集で癒されませんか サイン入り 北海道美瑛町

寄付金10,000円
写真家 中西敏貴 写真集(サイン入り)
中西敏貴さんは美瑛町に住む写真家です。
FARMLANDSCAPE青菁社か、ORDINARY風景写真出版
青菁社は雪の写真集など、ギフト本を得意にしている出版社ですね。クオリティ高いです。
ほかに寄付金72,000円からで額付き写真もあります。
地域の良さを伝える写真家を自治体がしっかり抑えているという証左ですね。
いい写真家が住んでいて、作品を発表していても、それを自治体が活用できていないことが多い中、この事例は興味深いです。
写真家自身も作品が返礼品になっていることが励みになるでしょう。
北海道鶴居村が1年間住んで写真を撮る人を公募するなんてことがありましたが、美しい風土を写真集にして、それが返礼品にする仕組みは、他の自治体でも応用が利きます。
おわりに
自治体はふるさと納税でいかにお金を集めるか知恵を絞っています。
今回、その中でサイン本の存在には驚きました。
サイン本は独自性があって、原価が低く、プレミア感のある返礼品です。
地方在住の作家さんは役場にどんどん提案してもいいかもしれません。
また、地方の出版社の発行物が返礼品にされていました。
地方小を経由しないと仕入れられない関係で、マンパワー乏しい書店は地方出版社の書籍を扱いたがりません。
そこで、販路としてのふるさと納税制度の活用は面白い試みではないでしょうか。
自治体はふるさと納税を集めるという目的を大切しつつ、こういった特産品を抱えることで文化パワーを高めることができます。
もちろん、どの程度ふるさと納税されるかわかりません。
ただ、確実に言えることがあります。
出版物を返礼品で受け取った人は、必ずその自治体を訪れてみたいと考えます。
たべものを受け取った人よりもその思いは何倍も強いことでしょう。
蟹!蟹!雲丹!雲丹! 桃!桃!メロン!メロン! 肉!肉!酒!酒!
で、生まれた交流より強いきずなになるのではないでしょうか。
そして、出版物の返礼品に気付いていない自治体が多いです。
そこで出版社が自治体に積極的なアプローチをしてもいいかもしれません。
さらなる充実を楽しみにしています。
読書家向けのふるさと納税
次回もお楽しみくださいませ。
お読みいただきありがとうございました。
コメント
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